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2023.04.05

ロービジョンの写真家向けカメラキット、ソニーとQDレーザ共同開発

ソニーとQDレーザが共同開発したロービジョン者のクリエーションをサポートするデバイス「DSC-HX99 RNV Kit」

ソニーは、同社のさまざまな事業におけるアクセシビリティの向上を目的とした取り組みを始めている。その一貫として、日本のテクノロジー企業であるQDレーザとの協業による「網膜投影カメラキット」を発売した。ロービジョンの方々にデジタルカメラによるクリエーションの可能性を提供する製品と技術について関係者をインタビューした。

ロービジョンの方々が楽しめるカメラ

ソニーの「DSC-HX99 RNV Kit」は、ロービジョンの方々もさまざまなシーンの撮影が楽しめるように設計開発されたデジタルイメージング商品だ。QDレーザによる網膜投影技術を搭載するアクセサリービューファインダーを、ソニーの高倍率ズーム対応コンパクトデジタルカメラ「DSC-HX99」に最適化した。

価格が10万9800円(税込)と高価な上、ビューファインダーの「見え方」には個人差があることから、発売日の3月24日以降にソニーストアの店舗で体験した方のみが購入できる商品とした。一般に購入可能な商品だが生産は数量を限定する。またソニーは「できる限り多くロービジョンの方々の手に届くように」という意図から、購入は1人1台までというルールを設けている。

ロービジョンとは、メガネやコンタクトレンズを装着しても「見えにくい」「まぶしい」「見える範囲が限られ歩きにくい」など日常生活に不自由をきたす視力の状態を指している。ロービジョンの悩みを抱える方々の人口は全世界で約2億5000万人、日本国内では約145万人とされている。

2006年に富士通研究所からスピンオフベンチャーとして創立したQDレーザは、2008年に量子ドット(QD:Quantam Dot)レーザを世界で初めて量産化した。同技術を活用する半導体レーザ製品から培った光学技術を基に、2015年にはレーザ網膜投影技術の事業を立ち上げた。

レーザデバイスのほか、同社が2本目の柱に据えるレーザーアイウェアの事業についてはロービジョン者の視覚補助、あるいはAR・VRエンターテインメントデバイスとしても楽しめるアイウェア「RETISSA Display II」を商品化している。本機は現在も販売中だ。
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編集=安井克至

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